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"Treatise on Invertebrate Paleontology"特集

ここでは、三葉虫やアンモナイトなど、古生物学の中の無脊椎動物 (Invertebrate)のすべての種が掲載されている、世界標準の百科事典/図鑑的な専門書のシリーズ、"Treatise on Invertebrate Paleontology"を特集します。Geological Society of America / University of Kansas という世界的な古生物研究機関が発行するもので、全文英語ながら一つ一つのGenus (属)の特徴等の記述、及びホロタイプなどのtype specimen (模式標本)の写真があり、大変分かりやすい構成となっています。

このシリーズは、分類学に基づきパートAからパートWまで細かく分かれており、その各パートもさらにVolumeに分けられているため、とてもたくさんの巻が発行されています。また、このシリーズは最初に発行されてから既に50年経っているものもあり、現在、順次改訂作業が行われおります。そこでこのページでは、三葉虫やアンモナイトなどの主要な巻について取り上げることで、皆様のご参考になれば幸いです。

→ Treatise on Invertebrate Paleontology

Treatise on Invertebrate Paleontology
Part T Echinodermata 2 (Revised), vol. 3
Crinoidea, Vol.3
ウミユリのうちArticulata亜綱について
H.Hess & C.G.Messing, 2011年改訂, 261ページ
ISBN 978-0-9833599-1-3
定価: $75.00
1978年に発刊されて以来の約30年間の研究結果を踏まえた改訂版です。ウミユリの種類のうち、唯一現在も深海などで生息しているArticulata亜綱についての形態、用語、および個別種の記載がされています。化石として産出するたくさんの種類の中に、現在も生き残っている種類の写真がはっきりと掲載されているところは、三葉虫など完全に絶滅してしまった古生物とは明らかに違った印象を受ける一冊です。
※リンク先の日本のアマゾンには旧版の場合がありますので、ご注意下さい。
Treatise on Invertebrate Paleontology
Part H Brachiopoda (Revised), vol. 1
Brachiopoda Introduction
腕足類の総論
Roger L. Kaesler編, 1997年改訂, 560ページ
ISBN 0-8137-3108-9
定価: $100.00
カンブリア紀の生物大爆発によって三葉虫と同時にこの地球上に現れ、現在でもシャミセンガイに代表される生物として日本でも生息している腕足類(Brachiopod)についての巻です。この腕足類の巻(Part H)は、ここ10年のうちにすべての改訂が完了しており、2007年までに全6巻の改訂版が出揃いました。ここに紹介しておりますその最初の一冊目では、腕足類についての体の構造や組織、生態や生息環境などの概要が示されており、三葉虫と同時に産出することが非常に多い腕足類についての詳細を知ることができます。
Treatise on Invertebrate Paleontology
Part O Arthropoda 1 Trilobita (Revised)
Trilobita
三葉虫についての総論および個別種の記載
Roger L. Kaesler編, 1997年改訂, 554ページ
ISBN 0-8137-3115-1
定価: $75.00
三葉虫全種を掲載するバイブル的専門書。全編に渡って記述は英語ですが、種の同定の上で欠かすことのできないタイプ標本の写真、および解説がすべての個別種に渡って掲載されています。現在、今から50年前の1959年に出されたものの改訂作業が進んでおり、これはそのうちの最初の1冊目です。この号では、三葉虫全般の概要および形態など一般的な記述、およびAgnostida(アグノスタス目)とRedlichiida(レドリキア目)についての個別の種の記述がされています。それ以降の個別種についての巻はさらに2冊発行予定とのことですが、現在のところまだ発行時期は未定とのことです。
Treatise on Invertebrate Paleontology
Part P Arthropoda 2
Chelicerata, Merostomata, Arachnida,
Pycnogonida, Palaeoisopus
カブトガニ,ウミサソリ,光楯類,ウミグモなど
R. C. Moore編, 1955年, 198ページ
ISBN 0-8137-3016-3
定価: $35.00
三葉虫以外の節足動物で、この巻で特に目を引くのは、最も有名な岡山県笠岡市などの山陽地方から, 九州や四国で現在でも生息している"生きている化石"のカブトガニや、米ニューヨーク州のシルル紀の地層から産出するEurypterus、ドイツ西部の2m以上の巨大種で有名なJaekelopterusなどのウミサソリでしょうか。もちろんその他にも、米ユタ州やオーストラアなど世界各地のカンブリア紀の地層から発見される、こちらもウミサソリと同様に既に滅びてしまったAglaspisなど光楯類(Aglaspida)と呼ばれる動物も含まれ、数少ないこれらの文献として非常に有用な一冊です。
Treatise on Invertebrate Paleontology
Part S Echinodermata 1
General characters, Homalozoa–Crinozoa
(Except Crinoidea)
棘皮動物の総論、ウミリンゴやウミツボミなど
ウミユリ以外の詳細
R. C. Moore編, 1967年, 679ページ
(vol.1-2/2冊セット)
ISBN 0-8137-3020-1
定価: $60.00
ロシアや北米のオルドビス紀の地層からの標本などで、三葉虫とともに同じプレートに載っていることも多い丸い玉のようなウミリンゴ(Cystoid)や、アメリカでPentremitesというの種が多産する、こちらもまさに名前の通りの花のつぼみのようなウミツボミ(blastoid)を中心に詳しい種の記載までされている専門書/図鑑です。この巻は2冊から成っており、1冊目に個々の棘皮動物(Echinodermata)の生態や部位の説明、続いてウミリンゴ(Cystoid)やParacrinoidなどの個々の種の記載、2冊目はウミツボミ(blastoid)やEocrinoidやHomosteleaなどの個々の種が掲載されています。どれも古生代末に絶滅したという意味で、まさに三葉虫と同時代を生きた生物であり、その全貌が一目でつかめる文献/図鑑です。