Paradoxides / パラドキシデス (チェコ産)
チェコ・ボヘミア地方はカンブリア紀三葉虫の代表的な産地の一つであり、今から150年以上前にJ.Barrande博士によって、後の三葉虫研究の先駆けとなる膨大で詳細な研究が行われたことでも有名です。この産地のJince Formation (ジンス層)は良質な化石を生み出すカンブリア紀中期の地層で、Paradoxides (パラドキシデス)のような大型のものから、群れて見つかるEllipsocephalus (エリプソセファルス)、いわゆる"blind (ブラインド/眼がない)"三葉虫であるConocoryphe (コノコリフェ)など複数の種類が産出し、博士のこの記載によってこの地から産出した種類のほとんどは現在各属の基準となっています。しかしその時代から採掘が行われているVinice Hillなどの採掘所では最近枯渇が進み、また基本的にその周辺の産地は森の中であるため、最近では状態のよい完全な標本の採取が年々難しくなっているそうです。
このParadoxides (パラドキシデス)は、最も初期の三葉虫であるRedlichiida (レドリキア目)に属し、その中でもこのParadoxides (パラドキシデス)は、Paradoxidoidea (パラドキシデス超科)やParadoxididae (パラドキシデス科)というように、代表的な初期の大型三葉虫の代表です。頑強な感じの頭部に長いgenal spine (頬棘)、細かい節に長いpleural spines (肋棘)などが特徴です。
しかし、チェコ・ボヘミア産のこの種の標本は、特に大型のものではこの特徴的なgenal spine (頬棘)が欠けて産出することがほとんどで、それ故に市場に出回っているこの産地のものを注意深く観察してみますと、そのほとんどが片方のgenal spine (頬棘)も残っていない状態が多いようです。従って、上記のように新たな状態の良い標本を採掘することが困難な状況なため、市場に出てくる両方のgenal spine (頬棘)が残るこの産地の大型のものは、そのほとんどが過去に採掘されたものが多く、人気の割にはほとんど目にすることのできない種類として有名です。