Phacops / ファコプス
モロッコを東西に走るアトラス山脈一帯は、多種多様なデボン紀の三葉虫が産出する世界的な一大産地として有名です。この地域のものは概して保存状態が良く、複眼や棘,突起が非常に発達したもの、複雑な形状や特異な形の部位を持つもの等、これまでに多くの人々を魅了してきました。化石産業が同国の重要な外貨獲得の手段の一つのため、三葉虫化石についても1990年代頃から次第に様々な種類のものが市場に出てくるようになりましたが、現在ではその当時と比べると化石を剖出する技術も格段に上がり、長く伸びる突起や1mm以下の棘を体全体に渡って立体的に完璧に剖出する職人も現れ、その人気に拍車を掛けています。なお、学術的にはここ10年ほど前からようやく地層の調査や種の記載が始まったところであり、それ故に現在も市場に出回る標本の種名には曖昧な点が多いことから、今後もしばらくの間は注意が必要な状況です。
Phacops (ファコプス)は、Phacopida (ファコプス目)の中のPhacopina (ファコプス亜目)、Phacopoidea (ファコプス超科)、Phacopoidae (ファコプス科)と、この目を代表する種類で、米ニューヨーク州Moscow Shale(モスコー頁岩)やオハイオ州Silica Shale(シリカ頁岩)などの世界各地のデボン紀の地層から広く産出する最も有名な三葉虫の一つです。実際、モロッコ・デボン紀の地層からも数多く産出し、市場にもたくさんの標本が出回っています。最近、ようやくこの地域のPhacops (ファコプス)についても学術的な研究が進むようになり、"Phacops speculator (ファコプス スペキュレーター)"一辺倒であった以前の市場に比べると変化が出てきています。Phacops granulops, lebesus, smoothops, arawなど新しい種類のものに加え、ReedopsやDrotopsの他、Austerops, Barrandeops, Pedinopariopsという属に分類されるものもあるという論文発表もされています。